不要不急で米澤穂信氏の小説を読む
先日、作家の米澤穂信氏が、新聞におもしろいコラムを寄せていました。
「心がすり減りつつあるなと思った時は、いま読む必然性がまったくない本が良い」と。
4/11(土)日経新聞「半歩遅れの読書術」は米澤穂信さん。「心がすり減りつつあるあるなと思った時は、いま読む必然性がまったくない本が良い」と。ご自身の経験談で『落語百選』『落語特選』(ちくま文庫)、須永朝彦編訳『江戸奇談怪談集』(ちくま学芸文庫) を挙げていただいています。ご一読下さい。 pic.twitter.com/kxbi4W98RD
— 筑摩書房 (@chikumashobo) 2020年4月11日
また米澤氏は、別のインタビュー記事でも、「いまこそ読むべき本というのはわかりません。」と言いつつ、「イマジネーションをかきたてる5冊」を紹介しています。
(ちなみにこの5冊のうち、ジェラルド・カーシュの『廃墟の歌声』は、米澤氏が別の対談でも挙げられていた本で、ファンにはおなじみですね。例えば『米澤穂信と古典部』39p)。
そんなわけで私も、(新型コロナで心がすり減っているわけではありませんが、)いま読む必然性まではない、米澤氏の新刊『巴里マカロンの謎』を楽しく読みました。
帯に「11年ぶり、シリーズ最新刊!」とありますが、私もこのシリーズが好きで、11年待ちました。
今回は短編集で、マカロンやチーズケーキ、あげぱん、シュークリームをモチーフに、高校生の主人公たちのまわりで起こった不思議な事件(いわゆる「日常の謎」)を解くうちに、誰かの心にひそむ後ろ暗い部分があぶり出されます。
ネタバレは避けますが、個人的にグッときたのは、あるエピソードの中の、「文化祭の日に、校舎からグラウンドを見下ろした際に、ある事件を目の当たりにする」というシーン。
ここから米澤さんの初期の傑作『クドリャフカの順番』のとある名シーンを思い出します。
不要不急の読書もよいものです。