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音楽、映画、読んだ本のメモ帳です

不要不急で米澤穂信氏の小説を読む

先日、作家の米澤穂信氏が、新聞におもしろいコラムを寄せていました。

 

「心がすり減りつつあるなと思った時は、いま読む必然性がまったくない本が良い」と。

 

 

また米澤氏は、別のインタビュー記事でも、「いまこそ読むべき本というのはわかりません。」と言いつつ、「イマジネーションをかきたてる5冊」を紹介しています。

 

www.gqjapan.jp

(ちなみにこの5冊のうち、ジェラルド・カーシュの『廃墟の歌声』は、米澤氏が別の対談でも挙げられていた本で、ファンにはおなじみですね。例えば『米澤穂信と古典部』39p)。


そんなわけで私も、(新型コロナで心がすり減っているわけではありませんが、)いま読む必然性まではない、米澤氏の新刊『巴里マカロンの謎』を楽しく読みました。

 

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

  • 作者:米澤 穂信
  • 発売日: 2020/01/30
  • メディア: 文庫
 

 

帯に「11年ぶり、シリーズ最新刊!」とありますが、私もこのシリーズが好きで、11年待ちました。

今回は短編集で、マカロンやチーズケーキ、あげぱん、シュークリームをモチーフに、高校生の主人公たちのまわりで起こった不思議な事件(いわゆる「日常の謎」)を解くうちに、誰かの心にひそむ後ろ暗い部分があぶり出されます。

 

ネタバレは避けますが、個人的にグッときたのは、あるエピソードの中の、「文化祭の日に、校舎からグラウンドを見下ろした際に、ある事件を目の当たりにする」というシーン。

ここから米澤さんの初期の傑作『クドリャフカの順番』のとある名シーンを思い出します。

 

クドリャフカの順番 (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

  • 作者:米澤 穂信
  • 発売日: 2008/05/23
  • メディア: 文庫
 

 

 不要不急の読書もよいものです。