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写真のトレースと著作権

このニュースが話題になっています。

 

mainichi.jp

 

 

このニュースを見た瞬間、真っ先にソウル・フラワー・ユニオンを聴き返したくなりましたが、それはさておき、写真のトレースに関する著作権法の問題としては、例えば、

 

 

などを参照。

 

メモ用に裁判例から引いておきますと、祇園祭写真事件では、まず写真のなかの創作性のある表現部分として、

 

本件写真は,祇園祭のイベントである神幸祭において被告八坂神社の西楼門前に4基の神輿(子供神輿を含む。)を担いだ輿丁が集まり,神官がお祓いをする直前の場面を撮影したものである(甲1の1,甲5,)。本件写真の被写体が客観的に存在する被告八坂神社の西楼門と,同じく客観的に存在しながらも時間の経過により移動していく神輿と輿丁及び見物人であり,これを写真という表現形式により映像として再現するものであること,及び,写真という表現形式の特性に照らせば,本件写真の表現上の創作性がある部分とは,構図,シャッターチャンス,撮影ポジション・アングルの選択,撮影時刻,露光時間,レンズ及びフィルムの選択等において工夫したことにより表現された映像をいうと解すべきである。

(中略)

撮影者がとらえた,お祭りのある一瞬の風景を,上記のような構図,撮影ポジション・アングルの選択,露光時間,レンズ及びフィルムの選択等を工夫したことにより効果的な映像として再現し,これにより撮影者の思想又は感情を創作的に表現したとみ得る場合は,その写真によって表現された映像における創作的表現を保護すべきである。

(中略)

本件写真の創作的表現とは,被告八坂神社の境内での祇園祭の神官によるお祓いの構図を所与の前提として,祭りの象徴である神官と,これを中心として正面左右に配置された4基の黄金色の神輿を純白の法被を身に纏った担ぎ手の中で鮮明に写し出し,これにより,神官と神霊を移された神輿の威厳の下で,神輿の差し上げ(神輿の担ぎ手がこれを頭上に担ぎ上げることをいう。)の直前の厳粛な雰囲気を感得させるところにあると認められる。

 

と判断したうえで、写真と水彩画の類似につき、

 

本件水彩画が本件写真に依拠して制作されたことは,前記第2・2(3)ア認定のとおりである。そのため,本件水彩画は,その全体の構成から細部の描写に至るまで,本件写真を基にして制作されたとみられる部分が多い。すなわち,本件水彩画の全体的構成は,本件写真の構図と同一であり,西楼門(門脇の木々及び狛犬並びに八坂神社の石柱を含む。),神官及びこれを中心として正面左右に配置された4基の神輿の位置関係がほぼ同じであるだけでなく,4基の神輿を担ぐ輿丁や多数の見物客の様子や姿態が全体として簡略化されているものの,その一部が不自然に類似して描かれているのである(甲12)。また,本件水彩画においては,本件写真と同様に,これらの西楼門,神官及び4基の神輿が,いずれも濃い画線と鮮明な色彩で強調されて描かれている。これに対して,本件水彩画においては,神官のお祓いを見守る人々は上記のとおり薄い画線と色彩で簡略化されており,また,西楼門背後の樹木は省略されている(甲1の1,甲5,甲10,甲12)。

 

本件水彩画においては,このようにデフォルメされている部分もあるものの,とりわけ,4基の神輿は,金色及び西楼門と同一の赤色で彩色を施され,多くの純白の法被の中で浮かび上がるがごとく,鮮明に描かれている。
本件水彩画のこのような創作的表現によれば,本件水彩画においては,写真とは表現形式は異なるものの,本件写真の全体の構図とその構成において同一であり,また,本件写真において鮮明に写し出された部分,すなわち,祭りの象徴である神官及びこれを中心として正面左右に配置された4基の神輿が濃い画線と鮮明な色彩で強調して描き出されているのであって,これによれば,祇園祭における神官の差し上げの直前の厳粛な雰囲気を感得させるのに十分であり,この意味で,本件水彩画の創作的表現から本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得することができるというべきである。
なお,本件写真と本件水彩画では,神官の動作及び持ち物に違いが認められる。しかしながら,本件水彩画では,神官の動作を紙垂が付された棒を高く掲げる動作に修正して,神官のお祓いの動作をより強調するものであって,この意味で,厳粛な雰囲気をより増長させるものと認められる。したがって,上記の表現の相違は,本件水彩画から本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得できるという上記認定を左右する程のものではない。

 

と判断しており、実務上の参考になります(下線は引用者)。