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音楽、映画、読んだ本のメモ帳です

『青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン!』

17年ぶりに再読。

 

青山真治阿部和重中原昌也シネコン!』(2004年、リトル・モア

 

青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン!

 

むかし読んだときは、青山氏がブライアン・デ・パルマの撮影技術、たとえば『殺しのドレス』のタクシーのシーン(139p)や、『キャリー』の紐を目で追うシーン(140p)、『ミッション・トゥ・マーズ』のパーティーのシーン(156p)を称賛するくだりや、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』でお爺さんの手にハンマーを握らせてその手を持って叩かせるようなシーンに「もうめまいしちゃう。ぞくぞくしちゃうよ。」と言ってしまうくだり(112p)を楽しく読んだのですが、今回読みかえしていちばん心に残ったのは以下の発言。

 

青山 まさに今そう。「愛のなさ」って話でいうと、こないだBSをつけてたらたまたま『地獄の黙示録・特別編』の予告編が流れてたのね。それをボーッと見てて、ああ、これだと。俺の愛のなさのもうひとつのパターンなんだけど、映画というのはボーッと見るものだと。感情移入とか、物語の筋を追うとか、そういうこと一切なしで、ただボーッと見てて、ただ単に自分の中に何か得体の知れない空気が充満する、みたいな。物心ついた頃に、それだけのことなんだって体験させられたのが『地獄の黙示録』だった。それからずっと、感情移入してこの人が好き、あの人が好きとか、そういうことを考えずにただ体験するというか体感するというか、ボーッと見てる。(244-245p。太字引用者)

 

「自分の中に何か得体の知れない空気が充満する」、これはたしかに優れた映画のひとつの条件だと、年月を経て実感します。