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アーツカウンシルとアームズ・レングスの原則

文化政策研究者の太下義之氏が先ごろアップされた「新型コロナウィルスに向き合う文化政策の提言」をご紹介。

 

active-archipelago.com

 

太下氏は、文化事業の業界を「炭鉱のカナリア」に見立てて、危機にある文化団体への金銭的支援として6つの方法(損失補償、助成金、貸付、委託、官民ファンド、基金)を提案するとともに、アーティストら個人への支援として、ブロックチェーンを活用した作品売買と、データベースの整備をそれぞれ提案されています。

 

個人的には、現状への悲観に終わらず、ラストで古典文学に言及されたくだりにも注目です。

 

もしかしたら、「コロナ以後」の世界は、もはや「コロナ以前」の元の世界に戻ることはないのかもしれません。


一方で、過去の疾病の流行においては、たとえば、ペスト(ボッカッチョ『デカメロン』、デフォー『ペストの記憶』他)、コレラ(マン『ヴェニスに死す』他)などの危機の時代を体験した芸術家が、その後に優れた芸術作品を生みだしています(上記ウェブサイトより。太字は引用者)。

 

なおこの提言のなかには、アームズレングスの原則や、アーツカウンシルへの言及もみられます。

 

下手をすると、国家による文化団体の経営監視とみなされてしまうかもしれません。まさに、アームズレングスの原則(国家等による文化への不介入)に関わる大きな問題となりますので、慎重な運用が必要となります。

 

こうした文化事業の委託を全国で実施するためには、国(中央)が直接実施するのではなく、都道府県や政令市等に委任して実施することが現実的かつ効率的だと考えます。この場合、当該自治体に「アーツカウンシル」的な機能が設置されていることが望ましいでしょう。「アーツカウンシル」的な組織がある自治体に優先的に資金を配分することも一つの方法かもしれません。

 

アーツカウンシルとは、「行政と距離を置いた専門家らによる第三者機関が助成対象を審査して助成先を決め、助成先のその後の活動を評価する」こと(参照:コトバンク)。 

このアーツカウンシルや、アームズレングスの原則については、太下氏の以下の著書もあわせてご参照。 

アーツカウンシル アームズ・レングスの現実を超えて (文化とまちづくり叢書)

アーツカウンシル アームズ・レングスの現実を超えて (文化とまちづくり叢書)

  • 作者:太下 義之
  • 発売日: 2017/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)