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映画『時をかける少女』覚書

大林宣彦監督の逝去をうけて、関西のテレビで『時をかける少女』(1983)が再放送されるそうで。

 

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関東でも、先だって4月18日に放映されてましたね(この映画はある年の4月18日が舞台なので、粋な計らいです)。

 

今からみると、特撮はチープに見えるところもありますが、冒頭の夢のようなモノクロのスキー場や、『HOUSE』からの連続性を思わせるホラー演出、唐突に使われるdolly zoomショット(『めまい』や『ジョーズ』で有名な、距離がグイーンと近づいたり遠ざかったりするアレ)などからは、誰にでも一見してわかりやすい技巧で観客の心を撃ちたい、という監督の趣向をつよく感じます。

 

そして、リマスターされた80年代の映画を観ているときによく感じるのは、たとえフィクションの作品であっても、カメラはこの現実をしっかり映しているわけで、それゆえに映画が、当時の世界そのものを切り取った記録になっているということです。

 

時をかける少女』も、まず何よりも尾道という街アーカイブであり、それは、主人公の家をあえて山の上のほうに設定していること、そのため何か事件があるたびに、主人公が山から下りていって、その都度、山から海沿いの街を一望するショットや、長い石の階段、屋根瓦の家並みが挟み込まれることからもよく分かります。

 

加えて、リマスターを経てもなお印象的なのは、画面が全体的に緑がかっていることです。

どうやら、当時の映画館での見た目もこのように緑色だったらしく、数年前にフィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)が、カメラマンの阪本善尚氏の監修のもと、全カットについて再タイミング(フィルムの色味の調整)をしたバージョンで上映していたことを思い出しました。

 

あいにくそのバージョンは観逃してしまったので、国立映画アーカイブさんは、新型コロナウイルスが落ち着きをみせた日には、例年どおり「逝ける映画人を偲んで」の特集などでぜひ再上映を・・。