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音楽、映画、読んだ本のメモ帳です

『米澤穂信と古典部』

『米澤屋書店』を読まれた方にはこちらもおすすめです。

 

米澤穂信古典部角川書店、2017年)

 

米澤穂信と古典部

 

一見すると、『氷菓』からはじまる〈古典部〉シリーズのファンブックですが、実はブックガイドとしても楽しめます。

 

例えば、「米澤穂信マイルストーン」という企画は、米澤氏のバイオグラフィーでありつつ、何歳のときにどんな本に出会ったかも時系列で触れられているため、これを読むと、アガサ・クリスティーの『なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか?』やシュペルヴィエル『海の上の少女』を読みたくなってきます。

 

また、ほかの作家との対談も収められていますが、一部はおすすめ本のブックガイド状態です*1

 

さらに凄いのは、「あなたの本棚 見せてください! 古典部メンバー4人の本棚大公開」の企画。

 

これは、〈古典部〉シリーズの登場人物4人の本棚にどんな本があるのか、米澤氏が想像してリストアップする企画なのですが、なんと1人あたり30冊のボリュームです。そのため、実質的には、米澤氏がチョイスした、30冊×4人=120冊分のブックガイドになっています*2

 

この調子で、ファンブックを装いつつも実はおすすめ本がたっぷり披露されたこの本。セレクションはミステリがやや多めですが、注に並べたタイトルのいずれかに引っかかった方はぜひどうぞ。

 

 

*1:たとえば北村薫氏との対談を読むと、坂口安吾の「アンゴウ」やジェラルド・カーシュの「廃墟の歌声」を読みたくなり、恩田陸氏との対談を読むと、スティーブン・キングの『死のロングウォーク』や、連城三紀彦『戻り川心中』を読みたくなり、綾辻行人氏との対談を読むと、高木彬光『人形はなぜ殺される』や、泡坂妻夫『乱れからくり』を読みたくなります。

*2:たとえば主人公の折木の本棚は、「(米澤氏)自身の趣味とは少しだけ異なる本棚にしようと思った」ということで、吉村昭『破獄』、G・K・チェスタトン『木曜の男』、サン=テグジュペリ『夜間飛行』などが並びます。
ヒロインの千反田の本棚には、詩集や少年少女むけの小説が多く、E・L・カニグズバーグ『クローディアの秘密』、ロバート・A・ハインライン夏への扉』、小川未明小川未明童話集 赤いろうそくと人魚』などなど。
主人公の盟友である福部の本棚には、「より深い趣味や教養の世界への入り口になるようなものを読むのでは」ということで、辻惟雄『奇想の系譜』、都筑卓司『新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ』、スタンレー・ミルグラム服従の心理』などの渋いチョイス。
漫研所属の伊原の本棚は、「思い切って漫画に絞ることにしました」として、、萩尾望都『11人いる!』、楳図かずおわたしは真悟』、大島弓子『バナナブレットのプディング』など漫画だけで30冊が並びます。